Act.1 Sugartime

その日、僕は区役所の帰りにアクセサリーショップに立ち寄った。
「どれいいかなァ……」
 店を歩きながら品定めをしたが、女の子のアクセサリーの事など僕には皆目分からない。
「すいません」
 店員に声をかけ、おすすめの物を選んでもらう事にした。
「こちらのネックレスはいかがでしょう」
 店員がすすめたのは、シルバーのロザリオ風ネックレスだった。見てみると、なかなか綺麗な感じがする。僕はこれを買う事にした。
「プレゼントにするんで、特別な包装でお願いします」
 僕の言葉に店員は、
「ガールフレンドにあげるんですか?」
と聞いてきた。僕は、
「い、いや、妹の誕生日なんで……」
と、ちょっとどもりながら商品を受け取り、店を後にした。

 家に着いたのは丁度夜七時。インターホンを鳴らすと、
「はーい」
と、妹・由香理の声が聞こえてきた。
「ただいま」
 間もなくしてドアが開き、由香理が顔を見せて、
「誠兄(まこにい)、お帰り。もうゴハン用意出来てるよ」
と、笑顔で言った。由香理は今年、高校二年生になった。容姿は兄である僕から見ても端麗という言葉が当てはまるくらい良い。
「由香理、今日は何の日だか覚えてるか?」
 僕は居間に入るなり、由香理に訊いてみた。まあ、お約束といえばそれまでだが。
「あたしの誕生日。もう、お兄ちゃんったら」
 由香理はそう言って笑った。僕はその笑顔に、何故かどきりとした。
「プ、プレゼントあるんだ」
 僕はカバンから先程買ったネックレスを取り出し、由香理に渡した。
「なんだろ」
「開けてみな」
 由香理は包みを開き、さらにケースを開けて、
「わあ、かわいい!」
と、ネックレスを取り出しながら感嘆の声をあげた。
「ありがとう、お兄ちゃん。付けてみていい?」
「ああ。きっと似合うよ」
 僕の言葉に、由香理は鏡の前に走り、ネックレスを付けて再び僕の前に姿を見せた。
「お兄ちゃん、どうかな」
「キレイだ……」
 僕はそれだけしか言えなかった。
「本当? お兄ちゃん、ありがとー!」
 由香理は目一杯喜んで、僕の胸に飛び込んできた。
「お、おい、何か僕、照れちゃうなァ……」
 僕の鼓動は加速度を増してゆく。
「お兄ちゃん、胸ドキドキしてる」
「え?」
 由香理の一言に、僕は全身が熱くなっていくのを感じていた。
「あのね、あたしもね、胸がドキドキして止まらないの」
 由香理は僕の胸に顔を埋めながら言った。僕はちらと由香理の顔を見た。頬が赤く染まっている。
「お兄ちゃん、プレゼントありがと。あたしのお願い、聞いてくれる?」
「何だい?」
「お兄ちゃん、あたしを、お兄ちゃんのお嫁さんにして……」
「え!?……」
 僕は由香理の一言にびっくりした。
「あたしね、ちっちゃいころからずーっと、お兄ちゃんが大好きだったんだよ。お兄ちゃん、言ってたじゃない。『由香理は僕が一生守ってやる』って。だから、あたし……」
 そこまで言って、由香理は涙を流しだした。
「由香理……」
 僕は由香理を抱きしめながら、五年前の出来事を思い出していた。

 僕達の両親が交通事故で他界した時の事だ。親戚が集まって、僕達の身の振り方について話し合いがあった。そのとき、
「誠は一人でも大丈夫だけど、由香理が心配だなァ」
と、伯父が言い出した。
「そうねェ、まだ小学生だものねェ……」
 伯母達も口々に言う。僕達も同席していたのだが、
「あたし、離れ離れになりたくないよ!」
と由香理が激しく泣き出したため、場が騒然となった。その時、僕は確かこう言ったのを覚えている。
「おじさん、おばさん。由香理は僕が一生育てるから」

 僕も、離れ離れになるのは嫌だった。だが今それが、もはや血のつながりをも越えた感情に変わっている事に、僕は気付いた。
「由香理」
 僕は妹を、優しく呼んだ。そして、顔を上げた由香理の涙をそっと拭い、
「おまえは、僕が一生守ってやる。だから、何も心配しなくていいんだよ」
と言った。
「お兄ちゃん……」
 僕たちは暫くの間、見つめあった。そして、キスをした。
 が。
 急に、僕の腹が鳴った。
「ごめん、腹ペコみたいだ……」
「ご飯食べてから、続きしようね。あ、それと、お風呂も沸いてるから」
 こうして、せっかくのムードは台無しになってしまったのだが、夕食は新婚の夫婦みたいな感じになった。

 夕食後、僕は風呂場にいた。湯につかりながら、僕は先刻の出来事を思い返していた。
「元々、こうなる運命だったのかな」
 そんな思いが頭をよぎる。一線を越えたことに、悔いはなかった。むしろ胸の奥から湧き上がってくるのは、
「由香理を、幸せにしてあげないとな……」
という、使命感のようなものだった。
「お兄ちゃん、入るよ」
 突然、由香理の声で思考が途切れた。
「え!? は、入るの!?」
 僕は慌てた。が、由香理は風呂場に入ってきてしまった。もちろん、全裸で。
「一緒に入りたかったんだ。びっくりさせちゃって、ごめんね」
 照れ笑いを浮かべながら、由香理は浴槽に身を沈めた。そしてまた、僕の唇に唇を重ねた。由香理の豊満な胸が、僕の胸に触れる。僕の下半身はみるみるうちに膨張していった。
「ゆ、由香理、僕、もうのぼせる……」
「そ、そういえばあたしも……。出よっか……」
 僕達は浴槽から出て、洗い場にへたり込んだ。ドアを少し開け、空気を入れる。
「少し、気持ちいいな……」
「うん……。あれ、お兄ちゃん、ここすっごく元気だよ」
 由香理は僕の股間を指さして言った。
「わっ! み、見るなよ、恥ずかし……って、由香理!?」
 僕はまた慌てたが、由香理は僕の分身に舌をはわせ始めた。
「お兄ちゃんの……、お兄ちゃんの……」
「おまえ……」
「ひさしぶりだよ、お兄ちゃんの見たの。でもね、こういうことするのは初めて」
 確かに、舌使いはぎこちない。だが、続いていくうちに、暴発しそうになってきた。
「由香理、僕、出そうだ……」
「大丈夫。飲んであ・げ・る」
 由香理は僕の分身を口に含むと、再び舌を動かした。そして……。
 僕は由香理の口の中で弾け飛んでしまった。
「ご、ごめん……」
「お兄ちゃんのミルク、美味しいー」
 由香理はにっこり笑っていた。そして、またキスをした。


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